「“ブビュグヮァン”」クーポがダイルの部屋のチャイムを押した。
暫らくすると「ガチャッ」とのぞき窓が開いて、中から例の大男ダイルがこちらを見ていた。
「どなたですか?」ダイルの間の抜けたもっさりとした声が響いた。
「いやぁ!俺はクーポってんだが友達になりたくてな!そんで遊びに来たわけだ!ちょっと開けてくんねえか?」
少し考えた後で「ウィーン」とドアが開いた。「どうぞ。」ぶっきらぼうにダイルがクーポ達を招きいれた。
「やあダイル!改めて自己紹介だ!俺はクーポ!地球では軍人をしてた。武器マニアでありとあらゆる武器を扱える特技の持ち主だ!よろしくな!」そういって手を差し出したがダイルはその手をじっとみたままだった。
「おう!俺はフービー!同じく軍人で、戦闘機、戦車、潜水艦、ヘリ、、、乗り物なら何でも扱える特殊部隊のエースパイロットだ!よろしくな!」フービーの差し出した手もただ眺めるだけのダイルだった。
「まあいいや!単刀直入に聞く!」フービーが切り出した。
「あんた、ジータンのパパのオシートを知ってるか?」ダイルは顔色1つ変えずに首をひねった。
「じゃあ!質問を変えよう!あんたはあのヘンテコリンな体操で洗脳されてないよな?」ダイルの右の眉がピクリと動いた。しかしダイルは又も顔色を変えずに不思議そうな顔でフービーを見ているだけだった。
「そっかぁ!分かった!じゃあ自己紹介してくれ、ダイル!友達になるにはまず自己紹介しなくちゃな!」やさしくフービーが言うとゆっくりとダイルが喋り始めた。
「私の名前はダイルです。毎日、体操してご飯たべて、散歩して、幸せです。」間の抜けたもっさりした声だった。
「どうやら俺達の思い違いだったみたいだな、フービー!こいつはマジで洗脳されてやがる!だいたい何の手がかりも無しにまともな奴探す方がどだい無理なんだよ!俺達だけでオシート探しすんべ!なあ相棒!」諦め口調のクーポだった。
「そうだな!そうするか!相棒!」諦めてフービーがドアの方に歩いて行こうとすると、、、
「待て!」ドスの効いた低い声がフービー達を引き止めた。声の主はダイルだった。
「フービーとクーポと言ったな!」ニヤリと笑いその大男は二人に握手を求めてきた。
「洗脳されたフリしてて悪かったな。ここじゃあ誰も信じられないんで取り合えずお前さん達を試させてもらった。」
ダイルがクールな低い声でそう言うと、フービーとクーポもニヤリと笑って3人は握手をした。
「お前さんたちが探してるオシートは確かに俺達の仲間だ。しかし奴は連行されても消されてもない。自分から出て行ったんだ。」ダイルがゆっくりと話し始めた。
「お前さんたちは何にも知らない様だから、俺達が知ってる事をまず、教えよう。」そういってダイルは知ってること全てをフービーとクーポに話した。
地球滅亡も火星移住も全ては火星人どもが裏で仕組んだ事。大統領もその一味で、自分の独裁国家を建国する為に自分の周りのイエスマンを除いて残りの人類を洗脳する事に同意した事。洗脳した人類の男たちは訓練の後、火星人どもの為に兵士として働かされる事。火星人は力が無い為、火星全体に重力、空気、海など地球に似た環境を化学的に作り上げて自分達を進化の過程で地球人並みの強靭な体に作り変えようとしている事。コロニーにはフェンスも何も無いので出入りは自由な事。しかし、外界は空気があるとはいえ、100キロ以上に渡り砂漠地帯であるため、コロニーから出ることは自殺行為である事。しかし、コロニーの外のどこかに火星人どもの軍事基地がある事。等等、、、
「なるほど、、、でもあんたが何でそこまで知ってるんだ?」フービーがダイルに問いただした。するとダイルは「実はジータンのパパ、つまりはオシートはペンタゴンの最高機密責任者だったんだ。だから今回の火星移住計画も、火星人による洗脳計画も全て知ってたんだ。そして、地球で捕獲したリトルグレーから、火星の環境を地球に似せて進化を科学的に操る事。それまでは地球人を兵士として使う事。火星にはコロニーのコアとは別に強大な軍事基地がある事。なんかを聞き出していたんだ。」
「だったら何でオシートは地球人特別保護区じゃなくて俺らと同じとこにすんでんだ?」クーポがダイルに聞いた。
「当然、ペンタゴンの最高機密責任者のオシートは地球人特別保護区に住むハズだったんだが、来る途中のスペースシップの中で、大統領と些細なことで口論になって、そのまま俺達と同じ居住区に放り出されたってわけだ。」
「些細なことってなんだ?」フービーがダイルに聞いた。するとダイルは「さぁ、それは誰にも教えてくれないんだよ。」
両手のひらを上に向け、アメリカ人特有の“知りませーん”ポーズをした。
「じゃあここからが核心だが、洗脳されてない仲間は何人いる?オシートは何の為にジータンに内緒で、なぜ自らコロニーを出た?」フービーが身を乗り出してダイルに聞いた。
「仲間はいない。俺とオシートだけだ。お前さん達の様に偶然洗脳されていない奴らは俺の見たところざっと10人位だったな。いなくなったのはたまたま洗脳されなかったバカどもが計画無しに出て行っただけだ。だから地下組織もなにもねえ。2つ目の質問だが、オシートがジータンに内緒で出たのはジータンの身の安全の為だ。オシートはジータンと妻のマータの安全を考えて、あえて洗脳の事を教えず洗脳されるようにしたんだが、なぜかジータンだけは洗脳されなかった。だからジータンには皆は病気だから話をしないように言い聞かせてリトルグレーの軍事基地を探しに一人で出かけたんだ!基地が見つかれば何らかの方法で俺に連絡が来る。」ゆっくりと立ち上がってダイルが言った。
「も1つ聞くがなぜお前は洗脳されずに済んだんだ?バカだからか?リズム音痴だからか?」クーポがダイルに聞いた。
「ハッハッハッ!こりゃ傑作だ!」大笑いしながらダイルが答えた。「そうか!お前さんたちが洗脳されなかった理由がそれか?ハッハッハッハッ!」笑いが止まらないダイルにクーポが言った。「お前だって見たらかなりのリズム音痴だったぞ!テンポも全然ずれてるし!」するとダイルがポケットから何かを取り出した。「これだよ!」見るとそれは耳栓だった。「何にしろお前さん達が俺を訪ねて来たのはビンゴだったな。俺は人を信用しないんだが子供を大切にする奴に悪い奴はいないってのが死んだ爺さんの口癖だったもんでな。お前さん達がジータンの為にオシートを探すって聞いたとき、
俺はお前さんたちを信じたんだ、、、、で、これからどうする?俺はオシートからの連絡をここで待つつもりだが、、、、、、、、」
「俺は行くぜ!」とクーポ。「俺も待つぜ!」とフービー。同時に言った後、3人は延々話し合いをした。
1つはっきりした事はジータンがリズム音痴だという事だった。



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